【ESG経営とは?】経営者にとってESG経営のメリットは?

近年、企業や投資家が注目するポイントに「ESG」があります。ESGとは、「環境(Environmental)」「社会(social)」「ガバナンス(Governance)」のことをいい、この3つの観点は企業の長期的成長に重要とされています。今回は、なぜESG経営が推進されているのか、そしてESG経営を推進することによってどのようなメリットがあるのかを解説したいと思います。

目次

ESG経営とは何か?

ESG経営とは、文字通り「ESGに配慮した経営」のことを指します。具体的には、脱プラスチック活動やCO2排出量の削減(環境)、充実した福利厚生や労務管理(社会)、適切な情報開示や役員報酬の開示(ガバナンス)などが挙げられます。

短期的に見れば,ESG経営はコストがかかります。ESG経営を行わず,利益を追い求めた方が決算の数字をよく見せることができるかもしれません。しかし、長期的に見ればESGに配慮した経営を行なった方がより多くの利益を上げられるようになったり,企業価値が向上したりすることが様々な研究結果で明らかになっており,資本主義市場の常識になりつつあります。

そのため,ESG経営のこうした活動は社会的責任感から行われるのではなく、むしろ「環境や社会への影響を考慮することで利益が増える」という考え(ニュー資本主義)のもと行われます。この考えは機関投資家やグローバル企業に浸透しており、実際にESGに配慮した企業への投資額は世界的に増大しています。2025年には全投資額の3分の1がESGを考慮したものになると予想されています。

似たような考え方としてCSRというものがあります。CSRとは企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility)のことを指し,「環境や社会に配慮した経営をすると利益を削られてしまうが,それでも社会的な責任から行う必要がある」という考え方です。

CSRとESGの違いについて解説した記事も併せてご覧ください。

次の項目でそのメリットについて具体的に説明したいと思います。

ESG経営のメリットについて

経営リスクの軽減

ESGに配慮する経営とは,今後会社が直面しうるリスクと向き合うことを意味します。現時点では明らかになっていない環境や社会などの問題が活発化すると将来的に経営に対してマイナスの影響を与えるかもしれません。また,これらの問題に対処するために様々な規制が行われる可能性もあるため,ESGに配慮すると,先んじて規制に対処することにも繋がります。

また,金融危機や経済危機下において、企業業績が予想よりも低く出てしまいというリスクを抑制することが期待されます。業績が市場の予想を下回ってしまうと,株価が暴落するリスクがあります。それを防ぐことができるのは企業にとって大きなメリットです。

実際にESG経営という言葉は,世界的な金融危機であるリーマンショックの後から出始めました。

投資家や金融機関からの評価向上

ESG経営は投資・融資判断の一つになりつつあります。従来、投資家や金融機関は財務情報のみを投資判断の材料にしていましたが、近年ではESGに配慮しているかどうかや、その方針も判断基準に加えられています。なぜなら先述した通り,ESG経営をしていない企業は、短期的に利益が出せたとしても長期的に利益を出せなくなってくると予測されるためです。そのため、ESG経営の取組みが評価されれば株主や投資家からの評価が向上したり,銀行からの融資が受けやすくなったりします。

サステナビリティ指数の構成銘柄に含まれる

企業が個人投資家から資金を集める際には,直接株券を買ってもらう他に,インデックスファンドに組み込まれるという方法もあります。

インデックスファンドとは,1つの企業だけではなく複数の企業を集めてきた指数です。「株の詰め合わせセット」みたいなものですね。投資家がインデックスファンドに投資すると,その資金はインデックスを構成する銘柄(企業)に分配されます。つまり,ある企業がある指数の構成銘柄に含まれていれば,その指数に対して投資された資金の一部を得ることができます。間接的に株主になってもらうということですね。世の中には様々なインデックスファンドが存在しており,代表的なものとしては「日経平均株価」や「ニューヨークダウ平均株価」「S&P500」などが挙げられます。

昨今はESG投資が加速しており,積極的にESG経営を推進している企業を集めてインデックスファンドを組成することが増えています。ESG経営に取り組むことにより,サステナビリティ指数に組み込まれる可能性が高まり,結果として資金調達が容易になります。

消費者からの企業イメージの向上

ESG経営をすることによって消費者からの評価が上がり、売上拡大につながる場合もあります。​​マッキンゼーが行った調査によると、顧客はより環境に優しい商品のために、今よりも多くの金額を支払う意思があるということが示されています。​​​​調査の対象となった回答者のうち70%を超える消費者は、環境に優しい商品で一般的な商品と同じ品質を有するのであれば、現在よりも5%高い価格を支払っても良いとも回答しているそうです。

安定した人材の確保

持続的な会社の運営には社員が不可欠です。ESG経営では、特に「S(社会)」の部分で社員にとって働きやすい環境作りが目指されます。就活生は働きやすい環境であるかどうかを判断基準の一つにおいていることが多いため、ESG経営に取り組んでおり、働きやすい職場と判断されれば人材を確保しやすくなることもメリットです。

また,働きやすい環境が整えば従業員が辞めにくくなり、採用コストを下げられるほか、従業員の定着率が高いと安定的な会社運営ができていると評価され、結果として金融機関や株主などからの評価も上がる可能性があります。

まとめ

  • ESG経営とは、「ESGに配慮した会社経営」を指す。
  • ESG経営にとって、持続可能な仕組みづくりが重要である。
  • ESG経営は長期的な利益が期待できる
  • 経営者目線でのESG経営のメリットは「経営リスクの軽減」「投資家や金融機関からの評価向上」「サステナビリティ指数の構成銘柄に含まれる」「消費者からの企業イメージの向上」「安定した人材の確保」
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この記事を書いた人

慶應義塾大学SFC研究所
上席所員 笹埜健斗(ささの・けんと)

社会情報学者。専門は「データサイエンスを活用したSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)」。高校時代、生死の境を彷徨い、哲学に目覚める。その後、国際哲学オリンピック日本代表、京都大学法学部卒業、東京大学大学院情報学環・学際情報学府修了を経て、慶應義塾大学SFC研究所上席所員および慶應義塾大学生成AIラボ所員。世界最大級のオンライン学習プラットフォームUdemyにて「サステナビリティ・ESG・SDGs」部門 No.1 講師。年間100回以上の講演会・セミナーに登壇。

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