近年、GRIスタンダードを使用して投資家に対してESGへの取り組みをアピールする企業が増加し続けています。そこで、より多くの人にGRIスタンダードの活用方法について紹介していきたいと思います。
ESGとは
ESGは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字をとったもので、投資や経営の場面で主に利用される用語です。利益を上げることだけでなく、サステナビリティに力を入れる「ESG経営」や、投資家が企業を評価する際に、企業のESGへの取組み評価するESG投資が盛んになってきています。
ESG経営について詳しく解説している記事もありますので、合わせてご覧ください。
そのESG投資への対策として多くの企業に利用されているのが、GRIスタンダードです。
GRIとは
そもそもGRI(Global Reporting Initiative)は、1997年に米国ボストンで設立された機関で、NPOのCERESとTelus Instituteが前身となっています。現在はアムステルダム(オランダ)に本社があり、世界7か国に拠点がある ちなみに、設立には国連環境計画(UNEP)も関与しており大きな影響力を有していると言えるでしょう。
GRIの目的は、責任ある環境行動原則への企業の遵守を確保できる説明責任メカニズムを作成することであり、最近社会、経済、およびガバナンスの課題にも範囲を拡大しました。
以上のことから、GRIは国際的な、独立した非営利団体であると言えるでしょう。
GRIスタンダードとは
GRIスタンダードの正式名称はグローバル・レポーティング・イニシアティブ(Global Reporting Initiative, GRI)スタンダードです。2016年にそれまでのGRIガイドラインに代わるGRIスタンダードが公表されました。
GRIスタンダードは、報告主体が経済、環境、社会に与えるインパクト(プラスとマイナスのインパクト、外部に与えるインパクトと外部から受けるインパクトを含む)を報告し、持続可能な発展への貢献を説明するためのフレームワークを提供しています。
また、GRIは2021年10月5日に共通スタンダードの改訂版、2022年10月にその日本語版を公表しました。石油・ガスのセクター別スタンダードの日本語版も公表しています。その他のセクター別スタンダードは現時点では英語のみになります。
改訂されたGRIスタンダードと、旧版との違いなどについての記事もありますので、ご覧ください。
GRIスタンダードの開発には企業、機関投資家、労働組合、 民間団体、及び市民社会などを含む様々なステークホルダーが関わっていて、スタンダードは定期的に更新できるように、モジュール形式になっています。以下の表では大まかな開示項目をまとめてみました。
表1:GRIスタンダード 番号と開示項目の対応表
GRIスタンダード対照表とは
GRIスタンダード対照表とは、企業のESGへの取り組みをGRIスタンダードに沿って作成された対照表です。NTTグループが公開しているGRIスタンダード対照表を下記にまとめました。
出典:https://group.ntt/jp/csr/data/guideline/
GRIスタンダードのメリット
GRIスタンダードのメリットとして、企業がESGに向けて取り組んでいることをわかりやすく伝えられるということが大きいです。その結果、ESG投資の面において、投資家からの信頼を得やすくなります。また、開示するべき項目が決まっているため企業の負担は小さくなり、投資家側としても企業間での比較がしやすいものとなります。
一方で、業界やその企業のビジネスモデルによってもESGの中でも何を重視するべきかが変わってくるはずなのに,全ての企業で項目を統一して開示するのは実態を正確に表していないのではないか,という疑問の声も上がっています。
まとめ
- GRIは国際的な、独立した非営利団体であり責任ある環境行動原則への企業の遵守を確保できる説明責任メカニズムを作成することを目的にしている
- GRIスタンダードを利用することにより企業がESGに向けて取り組んでいることをわかりやすく伝えられる
- 企業の負担は小さくなり、見る側としても比較しやすい