昨今ESG投資という言葉を耳にする機会が増えました。そこで、本記事ではサステナブルファンドとは何か、そしてESG投資の具体的な投資手法について解説したいと思います。
サステナブルファンドとは?
サステナブルファンドとは、環境・社会・企業統治(ESG)に配慮しつつ投資が行われた金融商品(ファンド)を言います。投資家は企業のESGに対する取り組みや持続可能性について、開示された情報をもとに評価し、投資を行い、それを金融商品として売る、という構造になっています。
2006年に責任投資原則(PRI)が発表され、ESG投資が世界的に注目を集めるようになりました。この流れに付随して、投資家の間でも企業のESGへの取り組みが重要視されるようになり、サステナブルファンドも次第に盛り上がりを見せるようになりました。
ESGスコアとは
サステナブルファンドの投資の基準としては、単に金融リターンのみならず、ESGスコアが用いられます。ESGスコアとは、企業の社会的責任、環境配慮、および企業統治の質(ESG)を評価するために使用される指標で、世界に600以上存在するESG評価機関があり、それぞれ独自の評価を行っています。詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
サステナブルファンドの種類
サステナブルファンドをより深く理解できる分類方法として、GSIAの7つの分類が有効と言えます。この分類は、GSIAが発表したESG投資の分類で、以下のようになっています。 まず、投資ポートフォリオを作るためのESG投資の戦略である、「ネガティブ・スクリーニング」「ポジティブ・スクリーニング」「規範に基づくスクリーニング」「ESGインテグレーション」「サステナブル・テーマ投資」「インパクト投資」の6つがあります。 さらに、投資前後の投資先企業へのエンゲージメントや議決権行使を積極的に行う「エンゲージメント・議決権行使」から構成されます。以下で、それぞれについて確認していきましょう。
ネガティブ・スクリーニング
ネガティブ・スクリーニングとは、1920年代に米国のキリスト教系財団から始まった最も歴史の古い手法で、武器、ギャンブル、たばこ、酒、原子力発電、ポルノなどの倫理的でないと定義される特定分野の企業を投資先から排除する戦略を指します。
ポジティブ・スクリーニング
1990年代に欧州で始まった手法で、同種の業界の中でESG関連の評価が最も高い企業に投資する戦略です。ESG考慮の高い企業は中長期的に業績化が高くなるという発想に基づいており、実際に投資できる企業が少なくなると言われることもあります。
規範に基づくスクリーニング
2000年代に北欧で始まった比較的新しい手法で、ESG分野での国際基準に照らし合わせ、その基準をクリアしていないと企業を投資先リストから除外する手法となっています。ネガティブ・スクリーニングやポジティブ・スクリーニングが投資家の理念や信条に基づいていて明確な指標がなかったのに対し、こちらは一定の基準に基づいているため、投資先企業リストを大きくすることができるといった評価があります。
ESGインテグレーション
投資先選定の過程で、従来考慮してきた財務情報だけでなく非財務情報も含めて分析をする戦略です。特に年金基金など長期投資性向の強い資金を運用するファンドなどが、将来の事業リスクや競争力などを図る上で積極的に非財務情報(ESG情報)を活用し、アルファ(市場平均よりも大きなリターン)を目指すために用いられることが多いようです。
サステナブル・テーマ投資
サステナブル・テーマ投資(Sustainability-themed investing)
再生可能エネルギー、水資源、持続可能な農業、男女同権、多様性など、様々なサステナビリティに貢献し得る投資テーマや企業に投資する戦略です。
インパクト投資
インパクト投資とは、財務的なリターンとともに社会・環境に良い影響をもたらすため、サステナビリティ分野の技術やサービスを提供する企業に対して行う投資となります。インパクト投資には、以下の3つの特徴があるといわれています。
- 意図:インパクト投資は、明確に社会・環境への影響を期待しているものであって、意図せず社会・環境へ良い影響のあった投資は、インパクト投資とはみなされない。
- 影響の測定:投資によって生じる影響は、投資が望ましい効果を達成したかどうかを評価するために測定し、報告され、定性的および定量的なデータを通じて追跡される。
- 影響の管理:データは、マイナスの影響を軽減し、プラスの結果を最大化することを目標に、意思決定に情報を提供する。 経済的利益も考慮される。従来の投資とは異なり、インパクト投資では、リターンが市場レート以下から市場レートまで変動する可能性がある
エンゲージメント・議決権行使型
株主と企業に対してESGに関する案件に積極的に働きかける投資手法で、株主総会での議決権行使、日常的な経営者へのエンゲージメント情報開示要求などを通じて投資先企業に対してESGへの配慮を迫るという手法です。近年は、気候変動関連や役員報酬(SAY ON PAY)に対して声を上げることが多く、このタイプの手法を取る株主は「アクティビスト」「物言う株主」とも呼ばれます。
以上、GSIAの7つのESG投資の形態について見ていきました。最も、実際にはこの7つの手法のうち複数が用いられた投資も頻繁に行われていることから、必ずしもどれか一つに大別されるわけではない点には注意する必要があります。
また、この分類はあくまでESG投資の手法を分類したものとなりますが、サステナブルファンドもESG投資を用いて投資が行われた金融商品であることから、GSIAによる分類を用いることで、サステナブルファンドも同様に類型化することができるのではないでしょうか。
サステナブルファンドの事例3選
脱炭素JAPAN
こちらのファンドは、野村アセットマネジメントが運営・販売しているファンドで、脱炭素関連分野で世界をリードする、高い技術力とサービス品質を持つ日本企業に投資するファンドです。世界が「脱炭素化」に向けて舵を切り、2050年までに温室効果ガスの排出実質ゼロを目指した取り組みが進められ、巨大なビジネスチャンスが生まれています。
また、野村アセットマネジメントは、上述のESG投資の手法を用いて投資を行い、金融商品として出しており、それぞれのファンドに対してどのような手法を用いたのかをラベリングしています。
SRIファンド(愛称:ファミリー・フレンドリー)
こちらは、三菱UFJ国際投信が運営・販売するファンドで、日本の株式を実質的な主要投資対象とし、「ファミリー・フレンドリー企業」として高く評価され、かつ株価が本来あるべき価格に対して割安と判断される銘柄に対し投資を行います。「ファミリー・フレンドリー企業」とは「仕事と生活を両立でき、多様で柔軟な働き方を選択できる企業」をいい、ESGのSocial(社会)の分野にアプローチしています。
VBPIX Vanguard Baillie Gifford Global Positive Impact Stock Fund Investor Shares
世界最大規模の機関投資家であるVanguardが運用するこちらのファンドは、社会的包摂と教育、環境と資源の必要性、ヘルスケアと生活の質の 4 つの分野のいずれかで前向きな変化をもたらすことができる、世界の優良な成長企業への投資を目指しています。