2006年に責任投資原則(PRI)が打ち出され、盛り上がりを見せているESG投資ですが、日本と米国とではどのような違いがあるのでしょうか。本記事では、ESG投資の現状を日本と米国でデータを用い比較しつつ、分析しています。
ESG投資とは
ESGとは、「環境(Environmental)」、「社会(social)」、「ガバナンス(Governance)」の略称をいいます。そして、ESG投資とは簡単に「ESGに配慮した企業に対して投資を行うこと」をいいます。日本では、2015年に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が責任投資原則(PRI)に署名したことをきっかけに広がりを見せています。
ESG投資について、詳しくは以下の記事からご覧ください。
日本と米国とを比較する前に、まずはESG投資の世界的な動向を見ていきましょう。
ESG投資の世界的な動向
国際団体のGSIA(Global Sustainable Investment Alliance)の統計調査(GSIR)によると、2020年時点で世界におけるESG投資額は35.3兆ドルとなっています。これは、2018年と比較して約15%増加しています。また、この数字は全運用資産の35.9%を占めています。
ちなみに、今後のESG投資額は以下のように推移することが予測されています。
全体としては増加傾向にありますが、地域によっては、ESG投資の基準見直しや規制強化が行われ減少しています。その中で、ESG投資額が最も高いのが米国なのですが、具体的に日本とどのように異なっているのか、以下で比較していきましょう。
日本とアメリカの比較
ESG投資額(2020)
2020年において、日本のESG投資額は投資資産のうち24.3%の2兆874億ドルとなっています。一方、米国は投資資産のうち33.2%の17.1兆ドルと、投資資産に占める割合、投資額ともに日本を上回っています。
また、上述の数字は2018年と比較し、日本は32%増、米は42%増となっています。
世界のサステナブル投資資産の地域別割合
世界全体のサステナブル投資資産の割合でも、日本と米国とでは大きな違いが認められます。世界全体のサステナブル投資資産のうち、日本が8%程なのに対し、米国は48%ほどと、大きな差が認められます。
グローバル・リスク・プロファイルのESG指数
スイスのリスク管理企業「グローバル・リスク・プロファイル」は176ヵ国・地域のESGへの取り組みを評価し、ESG指数という形で発表しています。これによれば、2021年で、日本は、衛生水準が高いことや社会保障制度が確立されている点などが評価され14位となりました。一方、米国はそれを大きく下回る39位という結果になっています。これは、トランプ政権時の化石燃料支持が影響したと考えられています。バイデン政権移行後は積極的に環境政策に取り組んでいることから、今後の上昇が予測されます。
以上の3つの比較から、ESG投資額は日本に比して米国が大きく上回っているものの、ESGへの取り組み自体は日本でも大いに評価されており、ESG投資発展の土壌は日本でも形成されているといえます。今後はESG投資の拡大も見込まれるのではないでしょうか。
まとめ
- ESG投資とは「環境(Environmental)」、「社会(social)」、「ガバナンス(Governance)」の略称
- 日本では、2015年に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が責任投資原則(PRI)に署名したことをきっかけに広がった
- ESG投資の世界的な傾向としては,2020年時点で世界におけるESG投資額は35.3兆ドルであり,全運用資産の35.9%を占めている。
- この数字は2018年と比較して約15%増加しており,全体としては増加傾向だが、地域によっては、ESG投資の基準見直しや規制強化が行われている。