AIで生産性が上がる!
企業業績や、納品スピードが上がり効率化が進む!
世の中のうたい文句はこういったポジティブな面一色ですが、当然ポジティブに対してはネガティブな側面が存在します。
こちらの記事では、人類のアイデア出しがAIに寄っていくことで受ける、ネガティブな側面について記述していきます。
AIでアイデアを量産するのは正義か?
まず結論から言ってしまうと、アイデアを量産すること自体はポジティブであると言えます。
しかし、下記の点で注意が必要です。
品質の低下
単純な一番大きい問題点として挙げられるのは品質の低下問題です。
例えば、生成AIが一般普及する前は、当然アイデアは人間が考えるものでした。
そこには「この程度のアイデアではまだ使えない」といった先達からの精査や評価を経て「この程度のアイデアは論ずるに値しない」といった自己での確認に至るまでプロセスが当然含まれていました。
しかし、生成AIの場合は「よく見るフレーズ」をそのまま出力する可能性が高いので、どのようなジャンルのアイデア出しにおいても「平均点」や「曖昧な意図」を出力することが多くあります。
例えば「キャッチコピーの生成」などがその最たるものです。
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東京都新宿区でマンションを売る為のキャッチコピーを考えて マンションは高いので、収入が高めの層をターゲットにして
ChatGPT4.0
東京都新宿区でのマンション販売に向けたキャッチコピーを考えるにあたり、対象となる収入が高めの層に響くようなメッセージ性が重要です。ここでは、新宿区の魅力として、アクセスの良さ、都会の便利さと賑わい、そして周辺の文化的・商業的施設の充実を前面に出し、さらに高収入層が重視するであろう質の高さやプライバシーへの配慮も盛り込むことがポイントです。
以下にいくつかのキャッチコピーの例を示します。
1.「都心の洗練を享受する。新宿、新たなる生活の頂点へ」
2.「新宿の躍動感と静寂、両方をあなたのものに」
3.「贅沢は、日常に宿る。新宿で叶える上質な暮らし」
4.「新宿で紡ぐ、都市生活の新たな物語」
5.「高みを望むあなたへ。新宿の空、新たなるステージ」
これらのキャッチコピーは、新宿の都会的魅力と、そこでの快適で上質な生活をイメージさせる内容となっており、収入が高めの層に向けた訴求力を持たせています。それぞれのキャッチコピーは、新宿の生活がもたらす価値やライフスタイルの向上を強調し、ターゲット層の関心を引きつけるように設計されています。
どれもびっくりするほど平凡で、なおかつ具体性に欠けます。
特にAIは「洗練」「新たなる」といった言葉が大好きで、今回ももれなく入っています。
例えば2の「新宿の躍動感と静寂、両方をあなたのものに」ですが、躍動感と静寂のあとに「両方」という言葉を使っています。
この場合に限らず、キャッチコピーで「両方」というのは安っぽく聞こえる為回避されるべき文言です。
しかし、AIは文章を作る時に出力の再点検が苦手なので、しばしばこういった言葉のグレードが合わない単語を並べてきます。
この場合両方に代わる表現は「両者」や「ふたつ」などの方が安定していると言えるでしょう。
こういった機微に気付かずにアイデアとしてテーブルに乗ることが今後多くなっていくことが懸念されます。
当然、質の良くないものが世の中に増えていくと世の中の平均が下がるので、そこから学習する後期のAIの質も平均的に悪くなっていくという予測が建てられるようになるでしょう。
出力に対する速度の低下
「出力」とは、この場合アイデア自体を出すこと、書き留める事と考えてください。
「速度」とは=「慣れ」の側面が大きくあります。
本人独自のアタリの付け方であったり、関連項目を集めて一気にアイデア化したりそれは本人独自のロジックです。
出力動作を繰り返すことで、それらの無駄は削ぎ落されて徐々に速度が開発され多くの出力ができるようになります。
しかし、生成AI頼みのアイデア出力を中心とする場合、これらのトレーニングを実体験する機会を失ってしまいます。
つまり、AIは今後CPUの性能向上、冷却装置の性能向上、転送速度の性能向上、AIモデルの最適化(縮小含む)が行われ速度が上昇していくのに対して、人間側はトレーニング機会を失い、どんどんと速度と品質が低下していくものと推察されます。
以前は「AIに聞くよりも自分(人間)で作った方が早い」といった項目だったアイデアも段々と「似たような質ならAIでいい」に置き換わっていくことでしょう。
低下×低下=ダメアイデア
上記の様に「アイデア本体」をAIに出させ続けると、人間もAIも能力が低下していくという悪循環が押し寄せてくるフェーズに入っていくでしょう。
いや、すでに実際に起こっているのかもしれません。
AI導入のデメリット 実際に現場で何が起こっているか
AI導入においてスピードアップや人材コストの削減などの恩恵がある一方、下記の様な明確なデメリットが浮き彫りになってきました。
例を取り上げてきます。
指示力の低下
元来すべての業種は上流から下流工程へ。
つまり、発案者から作業者へ仕事が発注されることが当たり前でした。
今もこれは変わっていません。
しかし、生成AIがある程度「それっぽい物」を作っていくため、出発点である上流からの指示の解像度がある程度低くても以前と変わらなく見えてしまうことがあります。
しかし、上流工程がAIに頼る局面が多くなると前述したように発想のトレーニング機会が失われてしまい、誰も精査をしていない無味簡素な指示が組織に流れることになります。
これらが招くのは当然全体の質の低下や遅延です。
考察力の低下
これは全ての仕事レイヤーに言えることですが、AIを活用した層の考察力が著しく低下しているであろうことが挙げられます。
発想の「答え」のみをAIに出力されてしまうため「なぜそこにたどり着いたのか」が抜け落ちているアイデアや提言の羅列が多くなっている現状が存在しています。
アイデアの創出には「答え」と「市場の答え」そしてこれらの見比べが特に大切ですが、AIはその工程をブラックボックスにして縮めて答えを提供してしま為「説明はできないがそこそこなんとなかってる」という状況がどんどん広がっていく懸念があります。
この「何故」という答えへのアプローチを失った時点で、すでに人間側の知性が衰退を始めたと言えるでしょう。
高品質管理者の不足
全体の考察力の低下と同様に、それらから形成される上位の管理者が不足していくことも懸念されます。
品質管理をする人間は特にそれらのアイデアが属する業界のセオリーや、反対に捨てられたアイデアなどを知っている必要がありますが、学習機会が奪われた人間が多くなるにつ入れて、こういった品質管理が可能な人間が誕生する可能性が下がっていきます。
「何故」それが良いアイデアなのか。
「何故」それがダメなアイデアなのか。
我々は既に考察をやめて答えの道程すらAIに求める方向にシフトしているのかもしれません。
確認していない
さらにこれらに限らず、もっと手前の一歩目で躓く現場も出てきます。
それが、AIの答え絶対主義とも言える思想です。
「AIが出してくれた答えなので」といって、内容を精査せずに提出する状況が今後頻発していくでしょう。
しかし、AIは膨大なデータを学習したいわば「玉石混合の詰め物」です。
当然、何の役にも立たないような悲惨なアイデアも含まれています。
マルコフ連鎖モンテカルロ法に代表されるようにAIは次にくる言葉を確率的な手法で吐き出すので、恐ろしく質の悪い回答も嘘も織り交ぜて出力します。
それらの真贋については人間が判断するしかなく、AIの出力はそもそも嘘をつく可能性があるといったことを認識できない人たちが、これを使うのは非常に危険であるということが言えます。
生成AIは何に活用するべきか
生成AIが我々人間の成長機会を奪ってしまうのは、仕事を任せている以上発生してしまうのは致し方ありません。
とすれば、AIにやってもらうべき作業とは何でしょうか?
それは「整理整頓」や「セオリーの解説」であると考えられます。
例えば「下記の項目を並べ替えてください」や「下記の文章で誤字脱字の指摘と修正か佐用の解説をお願い」「Aの解決法という資料の作成について、章タイトルのアイデアと解説をください」といった様な依頼が考えられます。
これらの依頼であれば、それまで人間が手作業で行っていたような仕分けや、校閲作業を一部軽減することができます。
また、短期的に疲れからくる思考力が落ちているタイミングや、解像度の低いジャンルへ挑戦するときにセオリー聞き取りを行うのはポジティブな使い方であると言えるでしょう。
それぞれの共通の条件はあくまでAIは「アシスタント」であるという点です。
最終出力の決定権を人間が握っている以上、判断力や品質は人間の方が上でなければいけません。
それらを忘れずにAIを使いこなすことが2024年以降の重要な課題となるでしょう。
「AIの特色を理解できないなら100%を頼るな」ということを肝に銘じなければいけないのかもしれません。
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