生成AIに関するプロンプトの研究は日々進んでおり、様々な仮説が検証され、新しいセオリーが誕生しています。
こちらの記事ではその中でも【否定文】を使うことについて回答精度が低くなるという内容を掘り下げます。
回答精度が低くなる。
すなわち、ダメな回答が返ってくるということです。
皆さんがAIに期待することは「完璧に近い回答」のはずですが、これでは使い損になってしまう可能性もあります。
ですので、今回の内容で何故否定文がダメなのかを確認してみてくださいね。
そもそも否定文とは 否定文の例と改善
そもそもAIへのプロンプトに対する否定文とは何でしょうか。
「~はしないで」「~をせずに」「~をやらずに」などがポピュラーな表現です。
では例で見てみましょう。
「暑くない国で、雪が降らない場所を旅行先として推薦してください」
こちらの例では、否定形を用いて特定の気候条件を排除していますが、それによってAIがどのような気候の場所を推薦すべきかを特定するのが複雑になっています。
「気候が温暖な」「過ごしやすい気候の」といった条件で十分でしょう。
「あまり甘くないお菓子が好きではなく、カロリーも高くないスナックについて教えてください」
このプロンプトでは、「甘くない」「好きではない」「カロリーが高くない」という複数の否定が組み合わさっていて、AIが具体的なスナックの提案をするのが難しくなっています。
「甘さとカロリーが控えめなスナック」とするとよいでしょう。
希望はストレートに伝えるべきです。
「歴史にあまり詳しくなく、戦争に関連しない重要な出来事について知りたい」
ここでは、「あまり詳しくない」と「戦争に関連しない」という二つの否定が含まれていて、AIがどのような歴史的出来事に焦点を当てるべきか判断するのが複雑になります。
「私は歴史初心者です。戦争以外の重要な歴史の出来事について教えて」といったように、明確に情報を区別するとよいでしょう。
要点は「もやもやするような文章を避ける」といったところです。
何故AIと否定文は相性が悪いのか
では実際に何故否定文とAIの相性が悪いのかを構造から考えてみましょう
複雑性の増加
否定文は、その性質上、肯定文よりも解釈が複雑になる傾向があります。
なぜかというと、否定文では、何かが「ない」または「違う」ということを表現しているから。
例えば「○○することをやめてください」というのは「するな」という否定文です。
しかし「○○という行為」を「キャンセルする」という二工程の理解を必要としており、思考を複雑化させます。
これは一番簡単な理解ですが、何かの学科試験の文章問題だとこういった「あれ? 何回否定入った?」といった文章があったりしますよね、こういうのはAI側でも処理がしにくいというわけです。
誤解釈のリスク
ChatGPTのような生成AIは、前述の意味で否定文の理解が苦手です。
さらに例を出すと「犬は猫ではない」という文は、人間には明確だけど、AIにとっては「犬」と「猫」の関係をどのように解釈すべきかが難しいのです。
これは、AIが単語の意味を絶対的なものとして処理するのではなく、文脈に基づいて解釈するためです。
さらに、言葉を正確に理解するというよりも、単語の類似性を管理する性質により、ズレが生じる可能性も考えられます。
焦点のズレ
否定文は、AIが本来の質問やトピックから注意が逸れる原因にもなり得ます。
例えば「私はピザを食べたくない」という文は、AIに「ピザ」というトピックに集中させる可能性がありますが、実際には「食べたくない」という否定の部分が重要だったりします。
この焦点がズレると回答への重きが変わってきてしまうため、だんだんと会話の内容がズレてしまうというわけです。
シンプルなコミュニケーションの重要性
今回紹介したように、AIとのコミュニケーションでは、できるだけシンプルで明確な表現を使うことが大切です。
肯定的な文を使うことで、AIはより効果的に情報を処理し、正確な応答を生成しやすくなります。
反対に否定文をプロンプトとして使うと、解釈の複雑さや誤解釈のリスクが高まり、AIがユーザーの意図を適切に理解するのが難しくなる可能性があります。
人間に対しても同じことが実はAIにも重要だったりする事例の一つですね。
シンプルで肯定的な言葉を選ぶことで、よりスムーズで正確なコミュニケーションや回答が期待できるようになりますので、日々のAI活用にぜひ生かしてみてください。